私が裁断台を作る決心をした日①※このページには怪我や出血の描写が含まれます。苦手な方は読まないでください。

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私が裁断台を作る決心をした日①
指を縫った日
※このページには怪我や出血の描写が含まれます。
苦手な方は無理に読まないでください。
裁断台を作った経緯や工夫だけ知りたい方は、後編から読んでいただいても大丈夫です。
私は長い間、床で裁断をしていました。
裁断台を手に入れたのは、プロになってから6年ほど経ってからです。
生地を床に広げる。
しゃがむ。
立ち上がる。
移動する。
またしゃがむ。
今思えば大変な環境でしたが、その頃はそれしか知りませんでした。
厚手ワンピース6着
ある時、厚手のワンピースを色違いで6着、
3日で仕上げる仕事を受けました。
今なら断ります。
でもその時は受けました。
受けるしかなかった事情があったのです。
裁断を始めてすぐに分かりました。
重ねて2着までしか切れない。
間に合わない。
厚手の生地にハサミが思うように入らないので、時間ばかりかかります。
切っても切っても終わらない。
裁断できて縫いに入るときには、もう惨敗が色濃くなっていました。
でも時間だけはどんどん過ぎていきました。
寝る時間を全てなげうって、必死に追いかけました。
けれど、信じられないことに高熱が出てしまって。
病院へ行って注射を打ち、熱は下がりましたが
失った時間は戻りません。
納期にも穴を空けてしまい
その会社との取引ごと終わりました。
その時に思ったのです。
もっと頑張ろう
ではありません。
方法を変えなければいけない。
そう強く思ったのです。
丸刃裁断機を買った

心底懲りた私は、丸刃裁断機を買いました。
先端恐怖症なのにです。
最近のはガードが付いているようですが
当時の裁断機はガードがありませんでした。
これなら速くなる。
これで解決する。
そう思いましたが…。
ところが問題は別のところにありました。
私は相変わらず床で裁断していました。
それが危険だったのです。
ある日、いつものように裁断していた時のことです。
コードを切りました。
火花を散らして、ショートしました。
その瞬間、本当にゾッとしました。
慌てて避けた時です。
左手の人差し指と丸刃が接触しました。
丸刃は吸い込まれるように入ります。
深く切れました。
でも、その瞬間に私が考えたのは指ではありませんでした。
血を落としたら終わる
生地です。
血を落としたら終わる。
そう思いました。
納品用の生地です。
血が付いたら使えません。
仕事も失うかもしれません。
だから反射的に手を握りました。
血を生地に落とさないように、
生地の上から瞬間的に手を引き抜き、
その辺にあった切り落としをつかみました。
痛いとか怖いとか、そんなことを考える余裕はありませんでした。
とにかく生地を守らなければ。
シンクで流れ出る血を洗い流すと、
病院に行かなければならないことを知りました。
巨大アメリカンドッグ
母が慌てて持ってきたのは
なぜか葬式用の真っ白なハンカチでした。
それを何枚も何枚も巻かれました。
気が付いたら私の指は、
巨大なアメリカンドッグみたいになっていました。
病院は日曜日です。
巨大すぎるのを文句を言うより先に救急へ行き
帰宅時間に間に合わせるしかありません。
私はそのままバスに乗りました。
そして案の定です。
バスを降りる時、前の人の背中に
その巨大アメリカンドッグが
「つーーーん!」
と当たりました。
痛い。
本当に痛い。
私はその時、怪我そのものより
「なんでこんなに巻いたんだよ」
と母に腹が立っていました。
だから言ったのに
病院の待合室では文庫本を読んでいました。
私は昔からそうです。
出産直前でも本が読める人間なので、その程度では本を閉じません。
ところが看護師さんが、先生が来る前に包帯を外すと言い出しました。
私は言いました。
「出血するからやめた方がいいと思いますよ」
でも看護師さんは外すと言ってききません。
私は
「だから言ったのに」
と思いながら見ていました。
そして包帯を外した瞬間です。
ボタタタタタタタ!
と血が落ち始めました。
私は驚きませんでした。
献血で慣れているからです。
ところが看護師さんは大慌てです。
「骨までいってるに違いない!」
と叫び始めました。
私はしょうがないので、
ボタタタタタタタ!と
流血している指を曲げたり伸ばしたりして見せました。
「骨は大丈夫です」と。
今思えば、出血している指を動かしたら余計に血が出るので、
あまり質の良い証明方法ではありませんでしたが。
でも、それが一番早いと思ったのです。
やっと先生が来ました。
私は縫われる様子をガン見していました。
先生も珍しかったのでしょう。
何をしているのか。
なぜそうするのか。
ひとつひとつ説明してくれました。
丸刃は深く入るんだよ。
そう言われて見てみると、本当に深かったのです。
さすがに縫い終わった頃には顔面が真っ青になりました。
貧血を起こしそうになったのです。
でも、そのままバスで帰りました。
ちなみに私の住んでいたマンションは、バス停から15分以上歩きます。
今思えばタクシーを使えば良かったと思います。
でも私は使いませんでした。
何でしょう、負ける気がしたのかもしれません(笑)
環境を変えなければいけない
この怪我で私は気付きました。
もっと慎重になろう。
ではありません。
【環境を変えなければいけない】でした。
床で裁断する。
床で丸刃裁断機を使う。
それ自体に無理があると気が付いたのです。
この時の私はまだ知りませんでした。
この怪我がきっかけで、
後に180cm×90cmのコンパネを4階まで担ぎ上げることになるなんて。
そして苦労して手に入れた裁断台が、
半年で使えないと分かるなんて。
その話は後編で書こうと思います。






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